【足を骨折するとお世話になる器具】①車いす(手術後~松葉杖卒業あたりまでの使用レポ)

骨折すると使う器具

足を骨折すると、身体を支えるためのさまざまな器具にお世話になります。

リハビリは、ステージに応じて使う器具が次々と変わっていくため、やっと慣れてきたと思ったら次の器具へ、の繰り返し。

診療や介助する側のプロは快復過程を知っているので、何食わぬ顔で「じゃ、明日からこれを使いましょうか」などと提案してきますが、すべてが初めての経験な本人にとっては、「この状態はいつまで続くのか?」「この器具とこの器具の違いは何?」と疑問だらけ。

そこで、私が片足の大腿骨を骨折してから自立歩行ができるまでにお世話になった器具と、その特徴についてご紹介します。

中には、購入が必要になるケースもあるので要チェックです。

①車いす(手術後~松葉杖卒業あたりまでの使用レポ)

ケガの程度にもよりますが、
大腿骨骨折の場合は、4週間、足を地面につけること(加重)が許されません。
つまり、どんなに回復力が高い人でも、最低1ヶ月は車いす生活を送ることになります。

私の場合、手術から7日後に車いすに座れるようになりました。骨折した足を可動性の支え板に乗せ、楽な角度でひざを伸ばした状態で移動できるようになっています。
片足骨折でしたので、立ち上がる時は片足立ちで移動しました。


車いすは、腕力で動かす乗りもの

車いす=介助者に押してもらう「楽ちんな乗りもの」というイメージがつきものですが、実際の入院生活では、四六時中つきっきりの人はいません。

もちろん、使い初めの頃や衰弱状態の時、操作が難しい方は看護師さんにフォローしてもらうことができます。

私の場合、乗り始めて数日はベッドからの移動やトイレ移動も介助してもらいました。(何せ屈伸できないのでスリッパも履けないし脱げないのです!)

創傷した足以外は問題がなかったので、 数日後には、終日自力で移動可となり、自分で車輪を押して移動することになりました。

車いすは、多少つま先で動かすことはあるのものの、基本的には“手を使う”乗りもの。

普段まったく筋トレをしていなかった私は、翌日から二の腕が筋肉痛になりました(笑)

それでも、術後1週間は傷の痛みで寝返りも打てず、ひたすら天井を見て過ごしていたことを思えば、看護師さんを呼び出すことなく自力でトイレや自販機に行けるようになることが、大きな前進と感じました。

車いすとの付き合いは、松葉杖で歩き始めても続きます

車いすと並行して、松葉杖などでの歩行訓練が始まります。

そこで、「松葉杖を使い始めれば、車いすは不要なのでは?」と想像する方もいるかもしれません。

しかし実際は、松葉杖を使いこなすのにも時間がかかりますし、怪我や長いベッド生活によって失われた体力・筋力の低下によって転倒リスクや制限以上の加重(よろけて思い切り体重を乗せてしまう)などの危険があるため、車いすは移動の必需アイテムとなります。

トイレに行くのも、座るのも、戻るのも、ひと苦労

はじめは、トイレに座るのも困難ですし、トイレから立ち上がり車いすに再び座るのもひと苦労です。

車いすの場所がちょっとずれただけでうまくトイレに辿り着けなかったり、トイレから立ち上がろうにも曲がらない足が車いす当たって立ち上がれない、なんてことがありました。

その都度ブザーで看護師さんを呼びます。


少し脱線しますが、そんな場面でも、異性の看護師さんがヘルプに現れることがあります。

最近は男性看護師も活躍しているようで、今回の入院時は複数の男性看護師さんにお世話になりました。

私は女ですので、男性看護師に介護されるのは恥ずかしかったですが、そんなことも言ってられないような状態でした。

その恥ずかしさや、些細なことでSOSをするのも気が引けて、早く慣れることに必死だった私。

次第にバックやカーブ時のスピードや力加減も上手くできるようになり、SOSをすることなくトイレを往復できるようになりました。

ほどなくして、エレベーターを使用して別の階への移動も、自走が許可されました。

“リハビリルームやコンビニに1人で行けるようになった!”

と、またひとつ前進した気分でした。

転院後も車いすとの付き合いは続きます


3週間後、手術をした急性期病院からリハビリ専門病院に転院しました。

急性期病院は長期間の入院ができないため、主治医から

「 松葉杖の生活はイメージできますか?可能であれば、退院してリハビリ施設に自宅から通院することもできますが、難しいようであれば、リハビリ病院でリハビリに専念してから自宅に戻ることもできます」

と2つの選択肢を提示されました。

私は幼子2人を抱えているため、松葉杖で家事育児をすることがまったく想像できず、

「無理です!」と即答しました。

ですので、そこで退院の選択肢をする場合は、車いすとはお別れをすることになると思います。

自宅がたまたまバリアフリーで、車いすも用意がある、という環境の方は少ないと思いますので…。

ただ、私の感覚では、退院時の状態で自宅に戻るのはあまりにリスクが高く無謀と感じます。

よほど体力に自信があり、松葉杖でどこへでも行けるという方や、よほど自宅に戻る必要がある方以外は、リハビリ専門病院への転院をお勧めします。


退院時は、車いすと松葉杖を使用している状態なので、当然ながら、転院先への移動は乗用車です。

家族で運転できる人がいれば自家用車、いない場合はタクシーを手配するよう促されます。

転院後も、しばらくは車いすにお世話になります。

付添人がいれば、車いすで外出可能に

松葉杖を安定して使いこなせるようになると、付添人がいれば車いすでの外出許可をもらえるようになります。

私の場合、外出許可をもらったのは、手術から約1ヶ月後でした。
初めての外出は、それはそれは感動でした。太陽の光を浴び、外の空気を思い切り吸いました。

ただ、外での車いす移動は、病院内の移動とは比べ物にならないほど大変でした。

車いすでの屋外移動は、困難の連続

車いすに乗ると、バリアフリー化が浸透していると感じていたのはただの幻想だったと反省します。それくらい、なんてことない街中がトラップだらけのダンジョンに思えます。


まず、よく考えれば当たり前のことですが、屋外には完全に水平な道がほぼありません。

轍や段差、坂道があれば、そこはもはや乗り越えられない壁、禁断の世界。

歩行なら気づかないアスファルトのちょっとした凸凹も、まるで未舗装の砂利道をガタガタと走るような衝撃を身体に感じます。


また、これも歩行なら気づかないようなゆるい傾斜が至る所にあり、それが下りならブレーキなしでは加速して危険ですし、上りなら自分の体重+車いすの重量を腕力で動かさなければならないのです。

はっきり言って、自走はかなりの負担です。

数分の外出なら頑張れても、数時間の外出では限界があります。

付添人にうまく頼って、自走で体力を消耗しすぎないよう注意しましょう。

屋外では、付添人に車いすの補助をしてらもらう方が安全

初めての外出に付き添った主人は、1歳児を乗せたベビーカーを片手で押しながら、もう片方の手で上の子と手をつないで歩いていました。つまり、傍にはいるけども、車いすの補助ができない付添人でした。

主人はそのことを心配していましたが、私は外に出たくて仕方なかったので、「自分で動かせるから大丈夫」と高を括っていました。

しかし、自力で外に出た直後、ゆるい下り道で車輪を制御できなくなりました。

正直、危機感を覚えました。回転が速く、手で車輪を触れなかったので、けがをしていない片足で必死にブレーキをかけて止まりました。

実は、この日まで、止まる時は手か足を使っていました。車輪の外側には、手動で車輪をまわせる持ち手があるので、そこでブレーキをするものだと思い込んでいました。

もちろんその方法でブレーキをかけてもよいのですが、それ以外にブレーキバーを使って制御できることを知らなかったのです。

車いすは両サイドにブレーキのバーがあります。立ち上がる時は必ずこのブレーキで車輪をロックしますが、このブレーキを使って、手加減しながら自転車のブレーキのようにコントロールができるようになっています。
というわけで、ブレーキの場所は必ず確認してから外出してくださいね。

そして、外出の際は、必ず両手の空いた、車いすの操作ができる状態の人に付き添ってもらってください。

※この時の反省点は、子どもを預けてきてもらうか、もう一人、手の空いた大人がいればよかったということです

※余談ですが、車いすで介助されると、一方で操縦されている感覚が怖いと感じました。「下り道で手を離されたら、転倒して死んでしまうかもしれない」「思いっきり押されたら、殺されるかもしれない」という感覚です。ベビーカーに乗っている子どもも、こういう気持ちになるのではと思ったりもしました。その後、車いすに乗った女性が、知らない人に突然操縦され誘拐されかかった事件がありました。周囲の人に助けを求めて事なきを得たそうですが、想像するだけで恐怖です

車いすだと避けて通れないトイレ問題

また、外出先で想定外だったのは、トイレです。

車いすで入れるトイレが限られていることは、念頭にありました。ですが、私は同じ日に2度トイレで焦った経験があります。

1回目は、家族とレストランで食事をした時のこと。

電話での予約時に、車いすでも入店できることを確認して行ったお店でしたが、
トイレがバリアフリーではありませんでした(^^;

松葉杖でトイレに向かうと、そこにはやや高めの1段の段差があったのです。

骨折前であれば、無意識レベルで上がったであろう1段。

しかし当時の私は、院内の階段よりも高さのあるこの1段に、完全にひるんでしまいました。

誤って加重をかけてしまうのが怖かったこと、また、もう食事を終えるところだったので、ここは我慢してバリアフリーのトイレがある近くのショッピングモールに行くことにしました。

そして、2回目の焦りはその直後にやってきました。

行き先は、お店を出て5分くらいの場所だったので余裕だと思っていたのですが、駐車場に到着した時点で、

「やばい、もう間に合わない~!」

という待ったなしモード。しかし、問題は

「急ぎたくても走れない!」

ことでした。当然、エスカレーターや階段ルートも使えません。

エレベーターを探し、エレベーターを待ち、フロアについたらバリアフリーのトイレを探し、そのトイレの空きを待ち…

車いす生活において、トイレ探しは骨折前の感覚でいると完全にアウトです(笑)

余裕をもって行動しましょう。

陳列商品で所狭しの店では買い物できない


ベビーカーに子どもを乗せてショッピングをすると、時折陳列商品にあたったり、狭くて通れず右往左往するといった経験がありました。

車いすも、まったく同じです。

ほしいものがあり、店内を見て回るつもりだったのに、途中で断念して引き返すことが何度もありました。

狭い通路で切り返すのもなかなかハードですので、店内に入る前にできるだけ導線をチェックし、予測を立てて移動しましょう。

おわりに

車いすを卒業したのは、事故から約2ヶ月後のことでした。

私の場合、松葉杖を卒業するタイミングで同時に卒業となりました。

理学療法士さんからは、もう少し早い段階から撤去することを提案されていましたが、室内の移動や、休憩時の椅子として便利すぎて、手放したくないとお願いしていました(^^;


骨折してからのリハビリ生活は、大変の一言に尽きます。

その間、車いすの存在のありがたさを実感すると共に、日常生活にあるさまざまなバリアも実感しました。

どんなことにも言えることですが、経験に勝るものはありません。

今後は、車いすの方を見かけた時や、車いすで補助する側になった時は、自分の経験をもとに配慮していきたいと思います。

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